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TWシルバーレイン内「山田・アスカ」の日記 ゲーム名に聞き覚えのない人は要注意。
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「ちょっとアスカ!なんで教えてくれなかったの?!ていうかいつから俳優業に手ぇ出したのよ!ウチの旦那ですらまだなのに!」
「痛ぇ痛ぇ。萌姉、マジ禿げる」
「禿げてしまえこのクソイケメンが!」

 事務所のソファに寝転がっていたアスカの、
 ハーフアップにした髪を力いっぱい引っ張る女性が一人。

 来月封切りになる映画の、広告用ポスター。
 そのキャストの下の方に小さく見える「山田アスカ」の名前。
 どこからひっペがしてきたのか、星児の姉・萌子がそれを握りしめて大阪から上京してきた。
「萌子、その辺にしてやって。一応ウチの稼ぎ頭だから。禿げたら事務所傾くから」
「……仕方ない。社長自ら言うなら許してやろう。ん、でもまぁおめでとう」
 そう言ってむき出しになったアスカの額にキスを落として立ち上がる女性は、弟そっくりな顔でにひひと笑う。
「つか、なにしに来たんだよ…星児なら珍しく仕事で居ねぇよ?お。マヨ!久しぶりだなぁ」
 一連の騒ぎを、事務所入口の観葉植物の影に隠れるようにして涙目で眺めていた少年に声をかける。
 こちらも幼い頃の星児そっくりの、真昼の双子の兄・真夜だ。
 漢字の読み方は「マヤ」だが、最初に漢字を見た星児がマヨと読み間違えたところから彼のニックネームはマヨになったとか。

 社長と萌子とその夫とは、学生時代からの友人であることはまた別の話。

 社長宅のリビングで遊ぶマヨと真昼を眺めながら、アスカと萌子はキッチンで一服。
 コーヒーを入れながら、アスカはてきぱきとケーキ作りの準備を始めた。
「ナニ作るの?」
「誕生日ケーキ。あ、そだ。萌姉のプロポーズってどんなんだった?つかデキ婚だったよな」
 萌子は記憶をたどるようにうーんと眉間にシワを寄せて唸る。
「そう。あの子たちが出来たからってのもあったけど。一応ちゃんとプロポーズしてくれた…てか、私がしたような」
「責任取らなきゃ頭から食っちゃうぞ、とか?」
「私を何だと」
「星児の姉」
「う。うん。似たような感じ、かも、だけど。指輪はちゃんともらったよ。悪阻始まってたからレストランとか行けなかったけど、爺さんのとこに報告に行く前に車の中で。『返品は受け付けない』ってケースごと指輪渡された」
「あー。良太サンらしいね」
「で、アスカは誕生日ケーキと一緒にプロポーズでもするのか。ん?どうなんだい。おねーさんに話してごらん」
 にやにやと笑う萌子に、ニコリと笑顔をひとつ返して。
「受け取ってもらえるか、ねぇ。ちょっとベタだけど、ケーキに隠して渡そうかと思うんだけど」
「丸呑みされないようにね?」
「大丈夫。その辺は抜かりない。飴細工習ってきた」
 そう言って戸棚から取り出したのは、キラキラ光るブリリアントカットの飴細工。大小様々。色も色々。
「へーぇ。相変わらず器用だね」
「カップケーキたくさん作って、コレでデコレーションする。中に埋めるわけじゃないから噛み砕かれることも……無いと思う」
 星児と料理の取り合いをする彼女の姿を思い浮かべると、自然と語尾があやふやになってしまうのはしかたのないところ。
「そうかそうか、あーんなちっちゃかったアスカが、ねぇ」
 目を細めて息子たちを眺め、思い出を拾い上げるように耽った萌子は、更にイタズラっぽい笑みでアスカを見上げた。
「もちろん給料3ヶ月分?」
「古いな!家が建つ。いや、普段使いも出来るようにシンプルなのにした。本当は自分でダイヤ掘りに行きたかったんだけどな。時間なかった。でも、まぁ知り合いのデザイナーに頼んで作ってもらったから一応一点物ってことにはなると思う」
「へー。それを私に見せてくれる気は無いわけだな?」
「そんな脅迫しなくても」
 飴細工と同じ所から取り出した濃紺のジュエリーケースを開けると、大きくもなく小さくもないダイヤモンドが一粒、キラリと光るシンプルな指輪。
「いやーん、いかにもって感じ!」
「だよなぁ。いかにも過ぎて、なんかこう……ヒネリが無いっつーか」
「なんであんたらはそう奇抜を狙いたがるの。いいのよこういうのは王道で!女心なんか全くわかっちゃいないんだから」
 焼きあがった大量のカップケーキの粗熱が取れる間に、ハンドミキサーで生クリームを泡立てる。
 機械から抜いた、クリームのついたままの先端を双子に渡すと嬉しそうにそれを舐め始めて、やっぱ子供は誰でも好きだよなぁなんて思いながらも着々とケーキのデコレーションを仕上げていく。
 クリームに色を付けて、ピンクや水色のおもちゃみたいなケーキ。
 そこに飴で出来た宝石と、本物の指輪を埋めていく。
「あーぁ。なにも新しいジュエリー油まみれにしなくてもいいのに」
 横から口やら指やらを出しながら、つまみ食いついでに萌子が言う。
「萌姉こそ男心わかってねぇな。なんだかんだ言って照れクセェんだよ」
 ケーキに驚いてる相手になら、勢いで言えそうな気がするだろ?と、冗談めかして言うが、果たして。
「姉ちゃんにも、特別、な」
 ひときわ大きい飴細工の乗ったケーキを差し出して。



 焼いたケーキの数、実に30個。
 そのうち10個を箱に詰め、車で鎌倉に向かう男の後ろ姿を見送った大人が二人。
「あの子に姉ちゃんなんて呼ばれる日が来るなんて」
「……兄ちゃんて呼んでくれる日は来るのかな……」
 今夜は飲み明かそうと決めた。



Would you marry me? 









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 この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、山田アスカが作成を依頼したものです。
 イラストの使用権は山田アスカに、著作権は香寺藍絵師に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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